
第174回芥川賞は、受賞作品が2つ。

スタートから家についての描写が続き、なんだこれは?新たなジャンル「建築小説」か?と思いましたが、空き家に忍び込みスケッチを始める謎の青年が登場したあたりから、物語の輪郭がはっきりしてきました。一軒の家にまつわる建造者、住人らのエピソードが、時代を行き来しながら進んでいきます。
時間の中心に家を配置し、その終焉は「死」につながるニヒリズムを感じる作品でした。

作者の鳥山まこと氏は建築家だそうで、建築家だからこそ書けるような描写も多く感じられます。
山田詠美の選評が、わたしの感想に近くて面白かった。確かに最初の方は、作者がどこに向かうのかわからなくて苦痛だった(笑)。後半になっての展開に、早く言ってよー、といった印象も言いえて妙。平野啓一郎の選評はこの作品には厳しかったです。
初出は、「群像」2025年8月号。