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ツリオヤジのダイアリシスな日々 ~ 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 (葉隠 聞書第一0202)

少年が来る - ハン・ガン 井出俊作訳 (クオン)

光州事件を扱ったハン・ガンの小説。
ハン・ガンの作品を読むきっかけになったのは、彼女が2024年のノーベル文学賞を受賞したことですが、それから早や一年が経ちました。時の経つのは早いものです。2025年のノーベル文学賞の発表は明日、10月9日です。

目次。
韓国歴史上、最大の黒歴史である光州事件。そこで友人を失った少年、トンホと、彼にまつわる人物の運命が切り抜かれ、記されています。

光州事件はハン・ガンが10歳のときにあった軍部政権による市民虐殺事件で、ハン・ガンはその頃に光州からソウルへと引っ越していたので、直接事件に関わったことはないのですが、12歳のときに光州事件を知って衝撃を受けます。

舞台は五・一八の前夜から始まり。トンホの友人、遺体を整理する姉さんたち、市民運動のリーダーの若者、それぞれの事件をはさむエピソードからなり、最後はトンホの母の悲嘆で終わります。

エピローグでは、ハン・ガンと光州事件の関りが書かれています。

軍部による残虐行為、民主化を求めながら殺された市民の無念、残された人々の悲嘆が描かれています。それはあたかも太平洋戦争中の特高警察を思い浮かべるほどで、韓国人がこのような悲惨な事件を経て行動し続けたことが、現在の民主化の道へと続いているのでしょう。

この本を読むまでは、韓国でこのような非道な出来事があったことは知らなかった。当時のわたしは学生で、金大中が逮捕されたニュースは聞いていたけど、詳細を追おうとせず、また政治家の汚職事件かよと軽く考えていました。当時は田中角栄がロッキード事件で逮捕された後でした。隣国では民主化を求めた市民が虐殺されているとき、呑気に麻雀ばかりの学生生活を送っていました。いま思えば、愚鈍な時間を過ごしていたものです。

昨年の12月、ユン・ソンニョル大統領が戒厳令を発したとたん、市民も国会議員も即時行動に移り、ユン退陣まで追い込みましたが、韓国の民主化意識は、光州事件を経て軍事政権を破った成功体験からきてるのでしょう。69年安保の挫折を経た日本人からみると、羨ましいマインドです。

とはいえ、この本は政治的メッセージでも、軍事政権の糾弾でもありません。あとがきにもあるように、光州事件で命を落とした人々へのレクイエムです。文章は平易で読みやすく(これは翻訳者の手腕もあるでしょう)、犠牲者と遺族に対するハン・ガンの想いがひしひしと伝わってきました。

平野啓一郎曰く、「傷ついた人間の痛みを、宛ら言葉に移し替えてゆく繊細な文体は、静かでありながら、決して屈することなく、最後まで語り抜こうとしている意思に支えられている(2024.11.10朝日新聞)」。この一文が、本書を的確に表していると思いました。

平野啓一郎は続いて、「韓国については、近年殊に、日本も文化的に大きな影響を受けつつ、政治的な緊張が高まる度に、愚にもつかない差別的な言説がメディアを騒がせる嘆かわしい状況がある。しかし、韓国人はこうだ、ああだというステレオタイプの偏見を語る前に、『少年が来る』を一冊、じっくり読んでみるべきだろう。文学の存在意義を再認識させてくれる作品である。」と評価しています。まったく同感。

カバーにある著者プロフィール。

著者プロフィール。

訳者プロフィール。

奥付。

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p.s. DWに戻した。2700引いて残りなし。