
7月に出た平野啓一郎の新刊。
横浜市の図書館に登録されるまで一か月くらい、すぐに予約したけど先着が10人近くいたので、借りるまでに時間が掛かりました。人気あるね。

内容紹介。
雑誌掲載の評論、随筆、講演会の文字起こしなどを一冊にまとめた本です。
表題の「文学は何の役に立つのか?」は、大学で行われた基調講演-文学のサバイバル、ネオリベラリズム以降の文学研究- の文字起こしになります。
先日に読んだ「あなたが政治について語るとき」と似た構成ですが、「あなたが政治について語るとき」は、新聞掲載のコラムを中心に、政治・経済について述べたものに対し、「文学は何の役に立つのか?」は、文芸誌が多く、文学・芸術について述べたものが多い傾向にあります。

目次1。

目次2。

目次3。
目次を読むとだいたいの内容はわかると思いますが、わたしの読む本と共通する話題も多く(安部工房、大江健三郎、ハン・ガン等),興味深く読めました。ただし、「オッペンハイマー論」、「豊穣なるゲルハルト・リヒター展」など、一部のエッセイは相当な事前知識を要するもので、歯が立たずに読むのをあきらめたのもあります。
面白かった例を挙げると、昨今の読書量の減少傾向なんですが、業界内の議論では、他媒体(ネット等)へユーザーが移動した、とか、国民的に読解力が衰退しているなどの要因が挙げられたようですが、結論のひとつとしてそれまでに考えてこられなかった要因が挙げられ、それが「可処分所得が減少している」ということでした。
つまり、30年来の経済不況により、みなが貧乏になって本にお金を使う余裕が減ったというわけです。言われてみると、わたし自身も新刊を買うことは少なく、たいていは古本で済ませてしまいますし、例えばここで挙げた「文学は何の役に立つのか」は2500円するので、購入せずに(時間が掛かるのはやむなしとして)図書館で借りよう、となっています。岡林信康のチューリップのアップリケではないですが、「みんな貧乏が悪いんや」の世界に出版業界もどっぷりとつかっているわけですね。
とはいえ、本書は濃い内容で、なにかの機会(本書に関連する作品に触れたとき等)にちょくちょく読み直したいものが多々あるので、いずれ購入しようかなと考えてます。

著者プロフィール。

奥付。
p.s.また台風くるのか。
